デ・ローチ・ヴィンヤードのワイン造りの哲学(JSA分科会セミナー)


デ・ローチ・ヴィンヤードのワイン造りの哲学
2014年初めての分科会セミナー。最近、機関誌「Sommelier」にて「ビジネス脳を鍛える」を連載中の新理事の吉川さんがセミナー運営を頑張っていらっしゃる。

今回のテーマは1975年にカリフォルニア・ソノマ地区のロシアン・リヴァー・ヴァレーに設立されたデ・ローチ・ヴィンヤーズ。カリフォルニアのブルゴーニュと呼ばれているロシアン・リヴァー・ヴァレーにおいて、2003年、ブルゴーニュの大手ネゴシアンであるボワセ・ファミリーと手を組んだことから、除梗・破砕をしない天然酵母による発酵、人の手によるパンチ・ダウン、ブルゴーニュから輸入したオープン・トップ樽を使った発酵槽、バスケット・プレスによる時間をかけた圧搾などブルゴーニュの伝統的製法による量より質重視のワイン造りに転換。また2005年に畑の全面植え替えを行い、2008年に有機認定、2010年にビオディナミ農法を開始し、サスティナブルを重要視したヴィンヤード運営を実現しています。

テイスティングコメントは、ホテル・ニューオータニ、トゥール・ダルジャンの谷さん。今回は売り方など、マーケティング的な視点も含めてのコメントでした。

VIN

1.2010 O・F・S ロシアン・リヴァー・ヴァレー シャルドネ
2010年は複雑なシーズン。8月まで寒かったが、収穫間際に40℃まで気温が上がる。そのためぶどうは脱水するが酸は止まり、糖度と酸が高く残る。ぶどうは全て手摘み。マロラクティック発酵を行い、酸をまろやかに。4つの畑からぶどうを買い付け、畑によってバトナージュを行った。 O・F・SとはOur Finest Selectionの略称。

外観:濃いイエロー、強い粘性
香り:洋梨、白桃、バニラ、トースト香、ヨーグルト
味わい:強めのアタック、豊かな果実味、やわらかなたっぷりの酸、凝縮感のある高いレベルでのバランスのよいワイン、余韻は長く、後味にノワゼットなどナッティな香り、アルコールは14.5%
マリアージュ:仔牛のカツレツ、ローストチキン、サモーンのソテーバターソース、鉄板焼き(サーロインの脂肪が合う)、天ぷら
販売方法:小売価格5,500円、レストラン価格で10,000円くらい。1杯1,600円程度でバイ・ザ・グラスプロモーション。

2.2009 ソノマ・コースト ピノ・ノワール
過去10年間でベストな年。手摘み、手作業で選果したぶどうを使用。ピノ・ノワール80%、シラー20%。

外観:ふちがオレンジのニュアンスのある明るいルビー
香り:ブラックチェリーなどの熟した黒系果実、黒こしょう、ドライフラワー
味わい:強めのアタック、豊かな果実味からくる甘さ、豊かな酸とのバランスがよいワイン、程よい樽香、余韻にスパイシーさが残る。アルコールは15%
マリアージュ:ビーフシチュー、焼き鳥(たれ)+山椒、スパゲティ・ミートソース、スペアリブ、クラブハウスサンドイッチ
販売方法:小売価格3,500円、レストラン価格で7,000円くらい。1杯1,000円程度ならカジュアルなメニューに勧めやすい

3.2010 マリン・カウンティ ピノ・ノワール
2010年はタンニンが難しい年。収穫されたぶどうの房には緑の粒があったので、手作業で厳密に選果した。パンチダウンを1日1回にした。
試飲ワインは2時間前にデキャンタージュ。

外観:縁がピンクがかったやや濃いめのルビー、強い粘性
香り:カシス、フランボワーズ、スミレ、血・鉄、若干オーク樽の香り
味わい:豊かな果実味とアルコールのボリューム、後からくる酸味、余韻は長く、アルコールは14.5%
マリアージュ&販売方法:小売価格6,000円、レストラン価格で12,000円くらい。コース15,000円の高級すき焼き

4.2010 O・F・S ロシアン・リヴァー・ヴァレー ピノ・ノワール
試飲ワインは2時間前にデキャンタージュ。

外観:紫のニュアンスの残る明るいルビー、強い粘性
香り:カシス、ブラックチェリー、フレッシュな完熟フルーツ、鉄
味わい:豊かな果実味となめらかなタンニン、豊かな酸、余韻は長く、アルコールは14.5%
マリアージュ:牛ヒレステーキ&トマトソース、フレッシュトマトのパスタ
販売方法:小売価格5,500円、レストラン価格で11,000円くらい。コース10,000円のイタリアン

5.2011 マボロシ・ヴィンヤード ピノ・ノワール
マボロシ・ヴィンヤードは大阪出身の私市(きさいち)友宏さんがオーナーのヴィンヤード。一念発起して奥さまと3歳の娘さんとフランスに渡り、アルマン・ルソーに1年間ワイン造りを習い、1992年にカリフォルニアに移り、1999年自身のワイナリー、マボロシ・ヴィンヤードを設立。2006年よりビオディナミ農法を開始。ワイナリー名は、奥さんと子供と一緒にフランスに渡ってワイン造りをすると言ったとき、それを聞いたご友人が「そんな幻みたいなこと」と言ったことに由来するそうです(このフレーズ、なんとなく好き)。
この時期にワインメーカーさんの来日が多いのは、ちょうど枝の剪定を終えて、発芽までの期間だからとのこと。
私市さんよりビオディナミ農法についての説明もあり、肥料は使わず、牛の角(必ず雌の角)に牛糞をつめて6ヶ月地中に埋め、バクテリアが培養された牛糞を1エーカー(45×100メートル)につき1g、水に薄めて撒く。農薬や除草剤も使わず、サンバイザーを着けたベビードールシープに地面に生えた雑草を食べてもらう。サンバイザーを着けるのは、下に視線を向けるためとのこと。また収穫期に手伝いたいという人がよく来るが、出稼ぎのメキシコ人たちのスピードにはかなわず、はっきり言って足手まといとのこと。
試飲ワインは2時間前にデキャンタージュ。

外観:縁が紫がかったルビー、やや強い粘性
香り:カシス、フランボワーズ、ブラックチェリー
味わい:口当たりがソフトで縦に伸びる果実味、ミネラル感、ソフトなタンニン、豊かな酸、余韻は長くエレガント、フィネスを感じる、アルコールは13.5%
マリアージュ:鴨料理
販売方法:小売価格10,000円、レストラン価格で20,000円くらい。ストーリー性のある良いワインはワインバーにてグラス売り。デキャンタージュやブルゴーニュグラスの使用等、売る側の知識が問われるワイン。あと5年寝かした方が飲み頃と思う。日本人によるぶどう栽培、フランス人のオーナー、アメリカの風土という多国籍なワインといいこともあり、高級無国籍料理のお店などにも。

どのワインも高いアルコール度数を持ちながら、それを感じさせないのは果実味、酸味、タンニンのバランスのよさにあると思います。
オレゴンのピノ・ノワールとはまた違ったアメリカのピノ・ノワールを味わえて大変興味深い内容のあるセミナーでした。

ザッハトルテ&ほうじ茶ラテ
ザッハトルテ&ほうじ茶ラテ
甘やかなアメリカのピノ・ノワールをしこたま飲んだら、無性にチョコレートケーキが食べたくなって、次の用務地神田駅前のスタバでお茶。ほうじ茶ラテにはキャラメルソースをトッピングして、苦甘いチョコレートケーキと似たものマリアージュにしてみました。

DATA

DeLoach Vinyards


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