料理とワインとデザインと
ワイン好きのみなさま、こんにちは。五輪エンブレム問題で改めて「デザイン」とは何かを考えさせられた山田にらです。
「デザインとは何か」、到底答えが出そうにない問いを抱えつつ、その答えを求めていくつか日本を代表するトップデザイナーの著書を読んでみました。
今回の五輪エンブレムの入選作3作品の作者の一人、グラフィックデザイナーの原研哉さん(ワイン好きのみなさまには「グレイスワイン」のエチケットのデザインでおなじみ)の「デザインのめざめ」と、多摩美術大学のOBであり、母校の統合デザイン科で渦中の佐野研二郎さんと一緒に教鞭をとっているプロダクトデザイナーの深澤直人さん(いろいろ素晴らしい作品はありますが、やはりINFO BARが有名です)の「デザインの輪郭」です。
なぜマリアージュ研究家である私が「デザイン」について考えたくなったのかというと…。
じつは、多摩美術大学デザイン科グラフィックデザイン専攻卒
今でこそWEB関係の仕事をしておりますが、大学で学んだのはグラフィックデザイン。
そうです私、渦中の人、佐野研二郎さんと同じ多摩グラ卒なんです。もっとも面識もないですし、時期もかぶっていないし、彼とは優秀さも違いますけど。
在学当時、私はあの蛭子能収さんの漫画に心酔し、神と崇め、せっせとへたくそな漫画を制作しては投稿、持込みに明け暮れる毎日で、学業なんぞに見向きもしないダメ美大生でした。エディトリアルデザインの課題をすっぽかし、かわりに自分が作った同人誌を教授に提出して単位をもらったこともあります。
そんな恥ずかしい過去を持つ私、卒業後はフリーターをしながら漫画家を目指すつもりが、縁あってバイトをしていた某ファミレスの本社のデザイン室に就職して性根を叩き直され、「なんだよ、サラリーマンって面白いじゃん」ということで、漫画家になる夢も忘れて現在もサラリーマンを続けています。
何度か転職も経験しておりますが、ダメ美大生でも「多摩グラ卒」という学歴のおかげで転職に困ることはなかったし、多少デザインに関わりのある仕事をしていると、デザインを学んだ人間とそうでない人間の歴然とした差を感じることがよくあります。
まず、形が汚いのは言語道断で、それだけでダメなデザインというのを往々にして見かけるのですが(私のブログのロゴマークなんかその筆頭です)、一見きれいに見えるけれど、どこかで見たような、「で?」と聞きたくなるような表面だけまとめたデザインというのも少なくない頻度で見かけます。
デザインワークにコンピューターを使うようになって、誰もが気軽にデザインができるようになってからは特に顕著に感じます。
そういうものと一流の人のデザインしたものとの差は歴然としていて、そこに佇む存在感というか、説得力が違います。その造り手が裏にあるコンセプトをどこまで突き詰めて考えたか、線ひとつ、フォルムひとつとどう向きあったかはアウトプットを見ればわかるくらいの眼はダメ美大生でも養えるのがアカデミックな教育の賜物だと思います。
最近ビジネスの現場でも「デザイン思考」という概念が言及されていますが、まさにこの事だと思います。
二人のトップデザイナーの「デザイン」とは?
原さんは「デザインのめざめ」の中で、マヨネーズの穴にたとえて「生産という遠大な営みの最後の最後の局面で人類のささやかな幸福のために一工夫する」ことと言い表わしました。
若き深澤さんは、高校生向けの雑誌に「工業デザインとは、工業製品を通じて人に夢を与える仕事」と書いてあったのを読んでその日にデザイナーになることを決めたそう。
二人のトップデザイナーが共通して言うのは、デザインの使命とは「人を幸せにすること」です。
今回の五輪エンブレムのデザインについて言うことがあるとすれば
トートバッグ盗作騒動のアメリカ人デザイナー、ベン・ザラコーさんの「日の丸とTをかたどった波」、俳優の田辺誠一さんの「日の丸に桜」、ツイッター上の「扇子」を代表とする数々の代替デザイン案がネット上に発表されていましたが、みなさん、何を考えて発表されたのでしょうね。まさか、佐野研二郎さんのデザインよりご自分の作品の方が五輪エンブレムにふさわしいとでも思っていらっしゃるわけじゃないですよねー。
作品を発表するのは自由ですが、そもそも発表されたみなさん、五輪エンブレム公募の応募資格に該当していないですよねー。
コンセプト、ビジュアル共に説得力があるデザインワークを五輪委員会は求めていて、やみくもに応募されても困るから広く一般に公募はしないで、実績のある方に限定して作品を募り、その中から選考し決定した作品が今回の佐野研二郎さんのデザインです。
某漫画家さんがおっしゃっていた「オリジナリティ」なんて、その横に誰もが知っているグローバル企業のロゴが並ぶのだからエンブレム自体には必要なく、むしろどんなものにも寄り添う、必要以上に主張しない、それでいて美しい、使い勝手のよいデザインを求めていたんだと思うのです。
そういう意味で、ネット上のみなさんの作品と佐野さんの作品とは次元が違うものです。
日光江戸村のにゃんまげ、TBSの黒豚、LISMOのリスなど、キャラ系の仕事が印象的な佐野研二郎さんですが、ベーシックなデザインもなさるんですね。
トートバッグの件はいただけませんが。
ちなみにこの記事の画像は、フリー写真素材ぱくたそさんで「デザイン」で検索したらヒットした画像です。ブラックユーモアといいますか、エスプリといいますか。
今回の騒動で学んだこと
改めて「デザインとは何か」を考えることによって、私がワインでやりたいこと、つまり「料理×ワインの幸せなマリアージュの体験を通して人々を幸せにする」ことに関する全ての行動こそ、デザインのプロセスと同じであるということに気づいたのです。
私のブログを通じての情報発信や、主催するワイン会に関わる全ての人を幸せにして、自分も幸せになるために今後もワインと関わり続けたいと思います。
後日談
2015年9月1日、五輪エンブレムのデザインが白紙撤回と発表がありました。
佐野研二郎さん曰く「エンブレムのデザインに関しては模倣や盗作は断じて無い」とのこと。
過去の問題の作品にしても、デザインの一番のキモは発想の部分なので、その能力は素晴らしいと私は思っています。
過ちを認め、残念な制作体制を見直すいい機会だと思います。
彼が本物なら、作品で私たちを納得させてくれることでしょう。その日を楽しみにしております。
参考
2015/08/29 山田にら | ma opinion
関連記事
新着記事
-
【レシピブログ】明太子風味のスパゲティサラダ
ハウス食品から「辛子明太子ペースト」というチューブ入り調味料が新発...
-
【レシピブログ】ひよこ豆とひき肉のスパイスカレー
スパイスカレー界で有名な印度カリー子さんが監修したという「スパ...
-
【レシピブログ】アフリカンチキンサラダ × 日本のメルロー
ワイン好きの皆さま、こんにちは!高血圧で絶賛減塩食生活まっしぐらの...
-
【レシピブログ】混ぜるだけ!簡単バナナドリンク
ワイン好きの皆さま、こんにちは!現在、膝の手術のため入院中の山田に...
-
【レシピブログ】夏野菜のキーマカレー × 山梨の赤
ワイン好きの皆さま、こんにちは!最近転職して、ちょっと忙しくなった...
前の記事: 【頒布会のべんきょう】牡蠣のピクルスの冷製パスタ×イタリアの白
次の記事: タブレ×スペインのロゼ・スパークリング
コメント/トラックバック
トラックバック用URL:
この投稿のコメント・トラックバックRSS